森の出口を担うまちの材木屋 池田元一商店さん

STORY

webサイト<木ッカケ>の誕生STORYからスタートしたSTORY。第2弾は、<東京の森あそび 木づかいツアー>で、間伐した木材を活用する「木づかい(時計づくり)」パートを担っていただいている池田元一商店さんを紹介したいと思います。

目次

東京の森あそび 木づかいツアー
桶屋として生業を始めて130年!
「森の出口」 まちの材木屋としての役割
「ウッドコミュニケーション」の名付け親は三和子さん
<木育>をテーマにした活動
≪株式会社池田元一商店の取り組み例≫

東京の森あそび 木づかいツアー

2021年夏。収まらぬコロナ状況、2つの台風が日本列島に接近した8月8日(日)に<森あそびツアー(青梅市成木にて間伐体験>を終え、その2週間後、オリンピックとパラリンピック間の8月21日に<東京の木づかい(時計づくり)>ワークショプが開催されました。昨年に続き、今年もコロナ対策を考え、開催人数の適正化のためイベント時間短縮し、2部構成にて実施となりました。width=100%10倍近い応募の中から、親子16組32名の参加者(実際は14組28名)が池田元一商店さんの会社を訪れ、思い思いのオリジナル時計の製作を楽しみました。width=100%さて、時計づくりワークショップの会場である池田元一商店さん。会社の中を覗いてみると、壁には一面木材がびっしりと並んでいるのがわかります。
一体、普段はどんな仕事をしていて、どうして環境学習、森林活動などの取り組みを会社ぐるみで行なっているのかなど、池田さん(代表取締役社長)とウッドコミュニケーション事業をとりまとめる奥さんの三和子さんにお話を伺いました。

桶屋として生業を始めて130年!

池田さん:桶を作る職人だった曽祖父が桶屋として、この地(現在の池田元一商店)で商売を始めたのが明治25年頃。昭和31年3月に株式会社設立を経て、ずっと木の商いをしている会社です。私は4代目となりますが、大学時代4年間、この会社で配達のバイトをし、卒業後は関連の企業に就職をして、本格的に家業に入ったのは27歳の頃でした。

賃貸や集合住宅暮らしの多い都心部では、接する機会が少ない工務店さん。どういった仕事をしているのでしょうか?
池田さん:一般的に地元密着でお客さんの注文を聞いて、設計から施行までを管理して、家を新築するのが工務店の仕事。昭和30〜40年までは、地元で工務店以外に家を建てるところはなかったと思います。
現在では、大きなハウスメーカーが主流となる一方で、工務店は担い手もどんどん減り、昔ながらの地元工務店はいなくなってしまいました。

材木屋さんという立場で工務店の変遷をみている池田さんにとって、池田元一商店さんの役割に変化はありますか?
池田さん:どこでもいつの時代でも、地元密着で地元から仕事もらうということは長い時間をかけて信用をつくっていくことが大事。町会、商店街、PTAなどとできる地区活動、地域活動に夫婦で参加し、地元の一員として根付く努力を代々し続け、地元からの信用を得て、工務店として仕事をもらえるようになってきました。

それに加えて地域活動の一環として、区商連さんとの<木づかいツアー>イベント、夢さん橋、エコフェスの出展につながり、社会的活動を担う会社として信用に箔がついてきたことは大きいですね。15年ほど前に建築を請負う工務店としてのリモデル事業部を設立しました。工務店はホームドクターのような存在なので、地元からの頼まれごとが増えています。工務店は生活提案をする存在でもあります。これまでの積み重ねが地元からの仕事にも繋がり、時代にあった工務店の仕事を考えた時、昔ならではの地元工務店の役割が今では当社に巡ってきていると感じます。

「森の出口」 まちの材木屋としての役割

リモデル事業部では、個人や不動産会社などから住まう空間に関する相談もあるかと思いますが、昨今の森(環境)や木材への関心の高まりなどを感じことはありますか?
池田さん: 近々、取引会社さんを森(青梅市成木)へ連れて行く予定なんです。実はその担当者のお子さんが、<東京の森あそび 木づかいツアー>に応募したことがきっかけとなり、話をお聞きしたところ、会社で社員教育として環境問題を取り入れたい、またリノベーションの現場の中に東京の木材を落とし込みたいと相談を受けたんです。不動産会社が木材の現場(森)へ行ってみたいという意識を持ち出した意味は大きいと思います。10年前では考えられないほど、環境問題への意識が高まってきています。これまで地道にやってきたことで、わたしたちが社会の中で活躍できる人、貢献できる会社になっていることを嬉しく感じています。

代々、木と密接なお仕事をしているからこそ、池田元一商店さんが環境学習に対して積極的な姿勢をとられていることが分かりました。「森の出口」という役割、活動を意識するようになったきっかけは何ですか?
池田さん:われわれ材木屋にとって、木は建築の材料に過ぎなかった。それまで廃棄するような木っ端や木くずが、都心部の人たちにとっては貴重なもので、触ったり匂いを嗅ぐだけで気持ちが癒されたりすることを知りました。そして、それは今の世の中に必要なことであり、それらを身近に提供することは会社にとっても必要な役割だと気づきました。その活動は結果的に会社のイメージアップにつながり、リモデル事業部の仕事へと繋がっていきました。

「ウッドコミュニケーション」の名付け親は三和子さん

建材・資材の販売、建物の改修工事などハード面を扱う一方で、住みやすさ、暮らしやすさといった人の意識に語りかける提案をしている「ウッドコミュニケーション事業部」。その活動の経緯や、今後の取り組みなどについて池田三和子さんが語ってくれました。
三和子さん:先に社長(池田さん)が話していた通り、木材を扱っている中で出る廃棄される木片、木っ端、木くずを活用できないだろうか?という課題が「ウッドコミュニケーション」の始まりでした。最初は“木で身近なモノをつくって販売しよう”がスタートでしたが、やっていくうちに川上(森)で伐った木を最後の木くずになるまで使い切ることを目指そう!と「森の出口」を意識しはじめました。

木を通して、人、モノ、ことを繋げることがわたしたちの役割ではないか?と感じてきました。そこで、2019年に「ウッドコミュニケーション」をミーティングからアクションへというテーマで、3回にわたるイベントを企画したんです。
第1回は「語る」をテーマに森側の人(林業従事者など)を東京へ招いて、東京の森のこと林業のことを語ってもらいました。続く第2回は、実際に山へ出向き森を歩き、森林を感じ、間伐体験を行いました。そして第3回目では、2回目で私たちが間伐した木材を活用してモノを作って販売したり、森を感じてもらうWS企画などのアクションを考えていたのですが、残念なことに台風のため中止となってしまいました。

<木育>をテーマにした活動

三和子さん:そこで次のアクションとして、乳幼児期から木と触れあう“木のおもちゃで遊ぶ”経験を目的にサミット株式会社芸術と遊び創造協会公益財団法人オイスカが実施している「赤ちゃん木育広場」の実施団体に応募をしたんです。選考いただき寄贈された木育おもちゃを活用して、品川区内の赤ちゃんとお母さん向けにイベントを重ね、現在も続けている<しながわ木育ネットワーク>の活動にもつながっていきました。
現在は、親子向けばかりでなく、小学校、中学校のこどもたちに向けて、会社の人材や木材料を活用した情報提供できないかと考え、来年(2022年)戸越公園内にオープン予定の環境学習交流施設「エコルとごし」に対して、環境保全の活動について木育の視点から提案していきたいと考えています。

同時に町会など、地区・地域でこどもたちを森へ連れて行くようなことができないかと提案しています。これまでの自社活動や木材を使い切るためのワークショップを通じて、木や環境に携わる多くの人たちと関わるようになり、ご縁ができました。環境に関する意識が高まっているし、地域との繋がりへの関心も増えているので、「森の出口」としてこれからも活動の幅を広げて行きたいです。

池田さん:区商連さんとおこなっている<東京の森あそび 木づかいツアー>で、成木(青梅市)で間伐した丸太材料は、自社にとっては売るために資材ではなく、あくまでもイレギュラー(イベントや取り組み)なもの。材料としての質や量的に事業には直結しないが、子どもたちが自分で間伐体験した木材として、意味や価値があります。これまでにも、イベント展示用の箱やプランターカバーなどを製作してきました。
こうした社会的貢献的な意味合いで「間伐材活用」を続けながら、間伐材の価値を高めて、これからの「事業」に繋げていくことを模索中です。

最後に、出展予定のしながわ夢さん橋ではどんなことを企画していますか
池田さん:ワークショップは難しいため、カッティングボード(まな板)、こっぱっぱキット(木っ端詰め合わせ)などの販売を行います。
三和子さん:是非とも<池田元一商店>ブースに足をお運びください!お待ちしております。

≪株式会社池田元一商店の取り組み例≫


****体験やワークショップなどの「こと」の提供****
〇「池田元一商店成木ツアー」「プリスクール西五反田関係者案内」 2014年
〇東京建築士会品川支部研修会 2015年
〇しながわ夢桟橋青空バザールで「木と縁の市」出展(2015年~)
〇品川区商店街連合会の「東京の木づかいツアー」のワークショップを担当(2016年~)
〇品川区エコフェスに成木の竹で箸づくり参加、グランドに森を再現(2017年)
〇しながわ木育ネットワークに参加し、しながわ子育てメッセや戸越銀座まつりで木育広場提供

****木を最後まで使い尽くすをモットーにした「もの」の提供****
〇リフォーム宅の押し入れや玄関収納の棚板に成木材を利用
〇品川区立三木小学校、芳水小学校PTAイベントに木っ端を提供
〇東京神田神社の神馬あかりちゃんの寝床のためのおがくずを提供
〇品川区文庫の森公園に木材チップを提供
〇品川区商店街連合会のクリスマスツリー製作の土台作成(2018年)
〇品川区商店街連合会の間伐利用のリンゴ箱、プランターカバー製作(2019年)
〇天王洲ビレッジ親子ワークショップ、品川冒険広場に木っ端、かんなくずを提供(2019年~)

株式会社池田元一商店
https://www.ikedamotoichi.jp/

東京都品川区戸越1-25-3
TEL 03-3494-1171 FAX 03-3491-4889
事業内容
資材部 木材・住宅資材の販売
工事部 大工工事・内装工事・住宅設備機器取付工事
リモデル事業部 住宅・店舗の改修工事・新築工事
ウッドコミュニケーション事業部 イベントでの森の出口活動