KIDS WONDER STREET

STORY

森と商店街をつなぐ10年 KIDS WONDER STREETが育てているのは、子どもたちの出番 森で育った木が、まちへ届く。

その出会いをきっかけに、子どもたちが遊び、学び、そして自分たちで場をつくるようになっていく。 木育イベント” KIDS WONDER STREET ” が育てているのは、子どもたちの出番です。 この取り組みのはじまりと未来について、建築家であり木材プロジェクトにも長く関わってきた山田敏博さんに話を聞きました。

すべては一台のベンチから始まった

── 山田さんと品川区商店街連合会の出会いは、2015年のベンチプロジェクトだったそうですね。 山田:きっかけは、間伐材ベンチ「BANCO」の製作でした。

やまなし水源地ブランドの活動に関わる中で、国産木材を活用した家具デザインや商品開発の仕事をしていた株式会社イトーキから声をかけてもらい、品川区商店街連合会の榎田さんとつながりました。

ベンチのコンセプトは、子どもたちと一緒につくり、商店街に置くことでした。

2年間でおよそ30台のベンチを制作し、今も商店街で使われています。 山田:設計では、天板と脚を分解できる構造にして、連結すればするほど座れる人が増えていくデザインにしています。

もう一つ大事にしたのは、長く使えることです。

通常より厚い板を使い、傷んでも削り直して再塗装できるようにしました。

実際、数年前には子どもたちとリペアワークショップを行い、ベンチを修復しました。 今は“2代目BANCO”として生まれ変わっています。

「BANCO」プロジェクトから福井県とのイベントにつながるきっかけは?

僕は福井県出身で、長く国産木材に関わる仕事をしていて、福井県の木材アドバイザーとしても活動してきました。

福井の森には、山の仕事をする人、木工職人、建築に関わる人など、さまざまな専門家がいます。

このプロジェクトでは、

森の仕事

製材 家具づくり 建築

といった普段は交わらない人たちがチームになって活動しています。 山田:福井の中だけで活動していると、どうしても視点が固定されてしまいます。

外の地域で活動することで、自分たちの考え方がどう受け止められるのかを知ることができます。 そうした外部との交流の場として、東京でのイベントが始まりました。

KIDS WONDER STREET 開催までの経緯

── 福井×品川コラボ企画は、2022年に宮前商店街で開催された『FUKUI SHINAGAWA HAPPY WOOD CARAVAN』から始まり、現在の『KIDS WONDER STREET』へ。 イベントはどのように進化しましたか? 山田:最初のイベント名 FUKUI SHINAGAWA HAPPY WOOD CARAVANが 続けていく中で「WOOD」という言葉がしっくり来なくなりました。

木を使うことは目的ではなく、 人の暮らしやまちが豊かになることが本当の目的だと思うようになったからです。

そこでイベント名を KIDS WONDER STREET に変えました。

子どもが主役のまちをつくる。 その方向に活動を広げていきたいと思ったんです。

── “子どもが主役“というコンセプトにどのような可能性を感じていますか? 山田: まちを見ていると、子どもが自由に遊べる場所が少なくなっていると感じます。

学校、学童、塾、習い事。 子どもたちは多くの時間を、大人が管理する場所の中で過ごしています。

昔のように、まちの中で自由に遊びながら人と関わる機会は、少なくなってきていると思います。

だからこそ、商店街が

子どもたちがのびのび過ごせる場所になったらいい と思いました。

その中で、"子どもたちの出番”の機会として考えたのが 小学生が木工ワークショップを運営する「木ッカケ for kids creative program」です。

山田: 人から教わるだけではなく、 自分が誰かに教える側になる体験です。

勉強も、人に教えることで理解が深まります。

それと同じで、

「誰かに楽しませてもらう」より 「自分がみんなを楽しませる」ほうが面白い。

つまり

与えられる側より、与える側になること。

そうした経験が、子どもたちの主体性につながると思っています。

その主体性を発揮するには、自分自身に「やってみたい」「挑戦したい」という気持ちが生まれる環境づくりが大切です。

何もないところから「やってみろ」と言われても難しいですよね。

まずは安心して行動できる場として「木ッカケ for kids creative program」で体現してもらえたらと思っています。

今年は「ウッドペンダント作りワークショップ」を開催します。

2025年の夏に青梅の森で品川の子どもたちと一緒に伐倒してきた丸太を使い、丸太を割ったり削ったりして、世界に一つだけの木のペンダントを作ります。

商店街という場所で開催する面白さは?

商店街は、さまざまな人が行き交う場所です。 遊園地やショッピングモールのように計画された空間ではなく 開かれたパブリシティがあり、公園のような空間でもあって 偶然の出会いや新しい発見があります。 何が起こるかわからない偶発性や多様な人々が混在する商店街という場に 子どもたちを一緒に参加させたいという思いがあります。

これからの広がり

だからこそ、KIDS WONDER STREETは、商店街のみなさんと一緒に育てていきたいと思っています。 実際に今回は、南馬場商店会の皆さんに企画から一緒に伴走してもらっています。マルシェの出店者も南馬場商店会から声をかけてもらいました。 そして継続していくためには、地域だけでなく 民間企業の協力も大切です。 今回は明治安田生命保険相互会社さんや三菱地所ホームさん、イトーキさん等の企業や、地元の城南信用金庫 品川支店さんなども少しずつ関わってくれるようになりました。

今後も一緒にイベントを盛り上げてくれる仲間を増やしていきたいですね。

── 最後に参加した子どもが大人になったとき、どんな変化が起きていたらいいと思いますか? 山田:自然素材の価値を理解し、それを活かせる大人が増えてほしいと思っています。

日本には豊かな森林や水資源があります。 それらを活かすことで、日本の未来や文化はもっと豊かになるはずです。

自然の価値を知り、それを仕事や暮らしの中で活かす人が少しずつ増えていく。 そのきっかけをつくりたいと思っています。

その小さな一歩が、 KIDS WONDER STREETです。


3月20日(金・祝)、南品川2丁目児童遊園で開催される KIDS WONDER STREETで、 子どもたちの出番が生まれる一日を、ぜひ体験してください。 インスタグラム:https://www.instagram.com/kids_wonder_street/
山田敏博 プロフィール
株式会社HUG代表取締役
NPO法人team Timberize副理事長
やまとまちと株式会社 共同代表
1973年 福井県生まれ。 関西大学工学部建築学科卒。 株式会社山本理顕設計工場勤務を経て、 1999年にHUGを設立し、建築や家具の設計デザインを中心に活動中。 2024年に設立した、やまとまちと株式会社では森林コンテンツの事業化にも取り組んでいる。 共著に「都市木造のヴィジョンと技術