しながわドリームジョブ<東京チェーンソーズの授業>in台場小学校
品川区の小学校では、さまざまな分野の職業を知り、自分の将来を考える「しながわドリームジョブ」という授業を行なっています。
今回、(STORY第4弾)で紹介した<東京チェンソーズ>の青木亮輔さんが、台場小学校で開催された「しながわドリームジョブ」で講師をすると聞いて取材に行ってきました。
本来、この授業の講師には、品川区内の近隣企業や関係団体などが務めるそうですが、 木ッカケスタッフでもある台場小の地域コーディネーターが、区内の子どもたちに"東京の森"のこと、"森の中の仕事"のことを知ってもらいたいと考え、学校に推薦したそうです。
青木さんの「森の仕事」を聞いて、子どもたちはどんなことを学ぶのでしょう。
台場小学校「ドリームジョブ」授業がスタート 今回のドリームジョブでは、東京チェンソーズ含め10社の企業が参加をし、それぞれの仕事について、子供たちとセッションを交わします。東京チェンソーズは、檜原村からオンラインで講義をスタートしました。青木さんの後ろには、檜原村の森の景色が広がっています。
目次
- 東京の林業
- 高付加価値化へ向けて
- 子どもたちからの質問
- しながわドリームジョブとは?
東京の林業
講師:青木亮輔さん<東京チェンソーズ代表>
青木:こんにちは、僕の会社「東京チェンソーズ」は、檜原村で林業をしている会社です。 東京で林業って、意外に思われるかもしれませんが、実は東京は、約4割が森林に覆われているという都市です。 僕の会社がある檜原村は93%が森林です。 戦争中は、軍事用材が必要でどんどん山の木が切られてしまいハゲ山になっていましたが、戦後に植林され、現在樹齢60年くらいです。
皆さんのおじいさんやおばあさんたちが子どもだった頃、植えた木なんですね。 だいたい樹齢60年から70年を超えると、木は伐採の時期になります。 山の木を伐採したらまた植林ができます。 木材は、日本では数少ない、再生産可能な資源としても注目されています。
僕たちはどんな仕事をしているかというと、木を切って、運搬車に積み込んで山から運び出したり、苗木を1本1本植えていったりの仕事をしています。下草を刈ったり間引きしたりも、木の成長に合わせて行います。
高付加価値化へ向けて
青木:そしてもうひとつ、大事な仕事があります。 「高付加価値化」と言って、木にできるだけ価値をつけられるような売り方、木を1本丸ごと使い切る方法を考えることです。60年育てて、大変な思いをして切って、運んで、セリという市場で取引されるのですが、実はそういう丸太が1本3000円くらいにしかならないんですね。 木の輪切りを鍋敷きとして販売してるんですけど、1枚2000円くらいで 販売しています。丸太のままだと1本3000円ですが、輪切りにして鍋敷きにすることで価値を上げていく、この方法を高付加価値な林業といいます。
具体的にいうと、現在、赤坂にあるアークヒルズというところで、クリスマスのイルミネーションとして活用してもらっています。活用した後は一旦持ち帰って加工し直して、施設の木道として利用してもらう予定です。 通常、山に捨てられてしまうような枝も、カフェの装飾やテーブルに活用したりして販売したり、「森デリバリー」というプロジェクトで、皆さんの街で木を使ったものづくりの体験を提供したりもしています。
こうやって切った木の価値を高めながら活用し、集めた資金で森の環境をよくしていきたいです。
子どもたちからの質問
―東京チェンソーズの名前の由来はなんですか?
青木:できるだけ若い人に興味を持ってもらいたくて、覚えてもらいやすく、東京にも林業があるぞというのを伝えたくてこの名前をつけました。
―仕事で特に大変なことや危険なことはどんなことですか?
青木:夏に下草を刈る時にスズメバチがいっぱいいるんですね、しかも真夏は暑くても日陰もない、そういうところが大変です。切った木は1トンくらいあります。日本では毎年40人くらいは伐採の際に巻き込まれて亡くなっているので、日々気をつけて仕事をしています。
―仕事の中で一番大切にしていることはなんですか?
青木:できるだけ木の持つ個性を生かしてあげられる仕事をしたいと思っています。なので、デザイナーさんや設計士さんたちと一緒になって素材の持っている個性をどうやったら生かせるかをいつも考えています。
―仕事にやりがいを感じるのはどんな時ですか?
青木:荒れた山、手入れがされていなくて暗い森を間伐してあげることで、明るい森になって、きれいに整備しなおしたときや、自分たちが伐り出した木がお客さんに喜ばれ、使ってもらっているのを感じた時ですね。
東京の森は樹齢60年から70年経っているとお話ししましたが、皆さんが僕と同じぐらいの年になったころには、東京には樹齢100年の森が広がっていることになります。そのころにはスギとかヒノキの背の高い木の下には落葉広葉樹が広がる、そんな美しい森が増えているといいですね。
林業という仕事を通じて皆さんの街の中に木の空間をふやしたり、東京の森林環境をよくしていくことで地球環境に貢献していくことを意識しながら仕事をしています。
台場小の子供たちだけでなく、都会で暮らしている私たちにとって同じ東京であっても森は遠い存在です。 ですが日々、木を伐り、苗を植え、森を育てている人がいます。職業という枠組みを通してみることで、少し森との距離が近づいたのではないでしょうか。そして実際に森へ訪れるキッカケになり、将来“樹齢100年の森”を支える人が生まれるとうれしいです。