neighborhood shops vol.5「瀬尾商店」

STORY

品川区内でこだわりの木製品等を販売しているお店をフカボリしていく企画、“neighborhood shops"。

第5弾は、戸越銀座商店街に店舗を構える、雑貨・家具・DIY用品・ファッション・USED品などを扱うセレクトショップ「瀬尾商店」スタッフの横地真理子さんにお話を伺いました。

下町商店街の空気と、毎日の暮らしに寄り添う店 戸越銀座商店街に「瀬尾商店」が生まれるまで

── もともとデザインのお仕事をされていたそうですね? 横地:はい。現在の仕事にも、その経験が大いにいかされるところがあります。戸越銀座商店街のキャラクター「戸越銀次郎」のグッズ作りなども制作させて頂いているのですが、地元の方々に人気があって買っていってくれるんですよ。

瀬尾商店 スタッフ 横地 真理子さん

── リノベーションとオーダー家具の会社として品川区戸越銀座で創業されたとのことですが、お店を開業したきっかけ、経緯などを教えていただけますか? 横地:もともと兄がこの近所で家具作りの工房を開いていたんです。近くで「オーダーもできて、いろいろなモノを扱う店舗をやりたい」という話になって、私が店舗担当として加わることになり、現在は夫と2人で『瀬尾商店』をやっているという感じですね。兄は現在もリノベーションを主でやっています。

── 戸越銀座商店街との出会いは? 横地:兄が木工関連の学校に行くために東京に出てきた際、住んでいた場所が戸越銀座の近くだったんです。休みの日に行くほど気に入った場所だったため、自然とこのエリアを選んだという流れです。私自身も下町感の残るこの商店街の感じがちょうど良くて、“ここでやりたいな”と思える場所でした。

兄の工房と、地域の声から始まった“リノベーション”の流れ

── お兄さんは独立開業当時からリノベ家具が中心だったんですか? 横地:最初は家具づくりから始めたんですが、工房にいると近所の方から「これ直せない?」みたいな相談をされることが多くて、それで部屋の直しをしたり、家具の再生をしたり、だんだんリノベーションの仕事が増えていきました。 その後、『toolbox』さんとの繋がりがあり、今もそちらとのお仕事が多いです。 家具などのリノベはもちろんですが、“住まい、生活にまつわるいろんなモノ”を置く店にしようという方向になり、そこから『瀬尾商店』のコンセプトが固まっていきました。 ── 最初に店に置いたもの、覚えていますか? 横地:最初はオリジナルのカッティングボードを作って置いていましたね。当時はモノを作る余裕(時間)があったので、遊び心のあるモノや小物をいろいろ作っていましたが、だんだん忙しくなってきちゃって…(笑)。 それから、兄はリノベーションの仕事が多くなり、家具を作った時に出る木材の端材をお店に置いたら、近所の人がDIYに使うのに買っていってくれたり。その後、生活雑貨や衣類などがどんどん増えていき、気づいたら今の形に。開業時は商品がまだ少なかったのですが、年々生活アイテムが増え、現在の瀬尾商店になっています。

誰かが大切にしてきたモノが、次の誰かに渡っていくストーリー

── リユース家具や雑貨が次の方に渡る時、記憶に残るエピソードはありますか? 横地:買取した木などに色を塗ったりしてリメイクもしていました。今はそのようなモノを置く場所がなくて買取自体あまりできていないのですが、モノひとつひとつにいろんなエピソードはありますね。 近所の人が持ってきてくれて、それをまた近所の人が買っていくことが多いんですが、「大事に使ってほしい」という思いがある人が多くて、また別の人に使ってもらいたいからと、またうちに戻ってくることもあるんです(笑)。地域の中が、持ち主の“思い”で繋がっている感じで楽しいです。 良いモノって、やっぱりいつまでも残り続けるんですよね。 「私がすっごい若い頃に買ったの」って持ってこられる方が多いのですが、昔のおうちに置いてあったようなこの木製の新聞入れ(※写真)も買取したモノです。とても良い物だから、磨いてキレイにしてお店に置いておくと、若い人が手に取って眺めていたり、買っていったりするんです。 ジェネレーションが違うと、古いモノがとても新しく、レトロ感のある素敵なモノにみえてくる。お店で“お宝を発掘”するように楽しんでいるお客さんの顔を見るのが、なにより嬉しいです。 そして、発掘した方がまた次に繋げていく。そういう瞬間を見ると、“ああ、ちゃんとモノに物語があるんだな”って感じますね。

瀬尾商店×木ッカケ×モノづくり

── 木ッカケとは、ワークショップなどでコラボされていますよね? 横地:うちは品川区ゆかりの作家さんのモノをいろいろ扱っているのですが、〈とごしぎんざの香り〉というフレグランスを作っているモノコスメラボさん、アクセサリーを作っているPATOさんと一緒に、うちの端材を使って“アロマが香るウッドチャーム作り”をやりました。 (区商連):そのイベントは、子どもたちのお仕事体験イベントの取り組みとしてやったのですが、参加した子が「またやりたい」と言ってくれて、私たち大人はサポートに回り、子どもが仕切るワークショップとして誰でも参加できる形にしました。 ウッドチャームづくりは4回ほど開催したので、そろそろ新しい企画をやりたいですね!

「ワクワクするモノを選ぶ」

── 瀬尾商店さんのコンセプトは「トキメキが見つかる雑貨店」。買付など、モノを選ぶ時の“決め手”ってありますか? 横地:「自分たちがワクワクするモノ」それが大前提ですね。 あとは、あのお客さんが気に入りそうだなって顔が浮かぶモノだったり、どこにでもあるモノじゃなくて、「え、こんなのあるんだ」っていう発見があるモノを選ぶようにしています。これってあったら便利だよね、という実用のラインももちろんですが。 ── ちなみに、その“顔が浮かんだお客さん”に連絡したりします? 横地:いえ、しないです。でも、その方が来店して、それを手に取って買ったとき、“よし!”ってなります(笑)。そんな距離感がちょうど良いかなと思っています。 お客さんの顔が浮かぶ感覚は、旦那がとても鋭いんですよ(笑)。 ── ふらっと寄ってもらえるお店づくりの工夫はありますか? 横地:入り口はいつもシーズナルなディスプレイにしています。 何かがありそう、迷い込んじゃったようなワクワク感、また来たくなる。そんな仕掛け(ディスプレイ)を心がけています。 初めての方はキョロキョロと、上級者の方は下の方まで物色する、そんなお客さんの様子をここ(レジ)から眺めているのが楽しいです(笑)。 (旦那さん):奥さんはセンスがピカイチなんですよ。奥さんの“いいね!”はお客さんの“いいね!”に繋がっています。奥さんが選んだモノを、僕がディスプレイを考えています。 店にふらっと入ってきた人が、最初に引かれていく場所とか、見ている表情を見ると、「この人こういうの好きなんだろうな」って分かるんですよ(笑)。その日はそのまま帰ってしまったとしても、「また来たいな」って気持ちが残ってくれたら嬉しいです。

5年後を思い描きながら

── 今後お店として挑戦したいことは? 横地:『瀬尾商店』を細分化したいんです(笑)。 2店舗目、夫婦で別店舗をやってみたい。ママ店舗、パパ店舗みたいな(笑)。子育てがひと段落するであろう5年後くらいかな…気長にお待ちください(笑)。
2012年のオープンから13年。 お店に息づく多様なモノたちの存在感は、ご夫婦で演出しているものなのだと、お話を伺って改めて感じました。個であって二人で、二人であっても個。お互いを活かす絶妙なバランス感覚が『瀬尾商店』を作っているのだと思います。 これからも“楽しい発見が見つかる場所”“モノの居場所”のような存在として、地元の方々や多くの瀬尾商店ファンに愛され続けていくことでしょう。
瀬尾商店
定休日:火曜日
電話番号:03-3787-7207
URL:https://seoshouten.co.jp/
住所:東京都品川区戸越1-19-18 TKビル 1F